香取物語香具屋姫探香記。(二)
2.ノンちゃんクモに乗る。
(1) 名はノンちゃん。ノンビリのノンだ。
(2) 小学4年だ。
(3) 風邪で学校を休んで、寝ているところから始まる。
(4) 爺ちゃんが入院中。
(5) 目が覚めたら、隣家のおばちゃんがいて、「眠っている間にみんな病院へ行った」と聞かされる。火鉢でヤカンの湯が沸く音がする。炭のにおいもする。黒い薬瓶と薬袋とミカンが枕元にある。その頃はテレビは未だ無かった。
(6) 僕だけ置いて出かけるなんて、などと思う。
(7) またうとうとする。夢の中で目覚める。庭の木に登っている。いつの間にか晴れて、青い空に、白い雲が浮かんでいる。寒くない。垣根の向こうは一面、蓮華の田。耳元で、爺ちゃんの声がした。「タニハナヲ マイテタビダツ サクラカナ」。振り向くとミツバチがウンウン唸っている。昔、刺されたから恐怖だ。手で払う。鉄棒選手のように回って、落っこちる。
(8) どこまでも落ちていく。ふわっとした網の上に落ちる。サーカスのネットのようだ。爺ちゃんが、頭のそばに立って笑っている。「爺ちゃんはクモになったの」と聞く。「おまえが痛くないようにね」という。
(9) 「爺ちゃん遊ぼうよ」。「何をして遊ぼうか。はさみ将棋と五目並べとどっちがいい」。「勝てないからどっちも嫌だ」。「じゃあ、映画とお経の話をしよう」と言う。本当は嫌だったけど、爺ちゃんがどうしても話したそうだったので、「いいよ」と答える。
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