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今日は久しぶりの、そして束の間の秋晴れ、楽しい体験を、小説家気取りで、書いておこうという気分になった。
図書館を出て、運動がてら、いつもと反対の駅に向かって歩いた。思ったより遠く、着いた頃には汗ばんでいた。駅前のロータリーは絵にかいたようなさびれ方だった。シャッターの林の陰に、これぞ昔の喫茶店という紫のガラスの扉が見えた。休んでいこうと、ドアに触れたが開かない。中も暗くて見えない。休みかと立ち去りかけると、中からドアを開けてくれた。カウンターとソファの座席がこじんまり並んでいた。私より年配らしい老人だった。銀色の髪と口ひげ、糊の効いた白いシャツにチョッキ姿で、背は曲がっていたがダンデイーだ。コーヒーとサンドウィッチを頼んで、置いてあった新聞を読んだ。ふとなつかしい音楽が聞こえ、何ともいえず胸にしみてきた。ああ西部劇の主題歌だ。曲名は思いだせなかった。小学校の頃父がステレオを買ってきて、私も小遣いで西部劇の曲が詰まったソノシートを買って聞いたのだ。食べ終え、飲み終えて、840円払って外に出た。あああれは「遥かなる山の呼び声」という曲だった。あの老人は藤村 俊二にそっくりだったなと思いながら駅に向かった。改札口を抜けてホームのベンチに座った時、あの俳優は今年の初めに亡くなっていたことを思い出した。人は死んでも古い喫茶店のような場所で、歳を取り続けている。江ノ島発町田行きの各駅停車が滑り込んできた。終点の先にも線路はつながっている。これは私の核心だ。
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