薫香香取り物語290712
連日の猛暑。裏の保育園ではプール開き。子供たちの歓声が響く。
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん、遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ。 梁塵秘抄
陽が翳る頃、天の原財団から先日の続きの「お香の会」のお誘いメールが入ってきた。ボタンを押して参席。香りで物語を楽しむ「香昔(こうじゃく)物語」というサイトに入った。
いつもの庭園の、植木や石組を巡る曲水のあちこちに、赤い赤い毛氈 (もうせん)と日傘が設(しつら)えてあって、SNSで集まった人々が客として座っている。水源に当たる東屋(あずまや)に香元(こうもと)らしき人物が座っている。
筆記用具と薫香録(くんこうろく)が盆に乗って流れてくる。盆から直接取る。
香元が宣言。香始めます。今日は「薫香香取り物語」の第3回です。「黒色の香木」の観賞香です。物語に沿って、香木や香りを観賞します。お手元の薫香録をご覧ください。
文字が浮かんでくる。物語が始まる。
金色の香木の話からずっとたって、香取りの翁の墓だったあたりが森になった頃の或る日、また神鳴りが落ちた。
今回の主人公は「炭焼きの翁」だ。
去年妻を亡くして消気ている。
もうすぐ初のお盆がくる。妻が好きだった山百合を取りに森に入った。
首尾よく3本の花を採って、近道を抜けようと、数日前に、神鳴りが落ちたところを通った。
焦げた樹の根があった。
焼け焦げの奥に、こぶし大の黒光りする塊が見えた。
翁は、これは炭ではない何かだと思って手に取った。ずっしり重かった。匂いはしないが、頭の奥がしびれるような何かを発している。花と一緒に妻の仏壇に供えようと、ふところに入れた。
香元の声がする。「それはこんな香木でした」。香元が香木を盆に載せて流す。川上の客から順に、次客に礼をして、盆ごと流れから手元に置き、香木に礼をして拝見、流れに戻す。黒色で、石炭のようだった。
香元の声がする。お手元の薫香録をご覧ください。文字が浮かんでくる。物語が続く。
家に着いて、お盆の飾り付けをして、花と黒い香木を供えた。
仏壇の香炉に炭火を置き、香木を少し離して置いた。鼻ではなく心に染み込む霊気のようなものが漂ってくる。
香元の声がする。「それはこの香りでした」。香元が香炉を盆に載せて流す。川上の客から順に、次客に礼をして、盆ごと流れから手元に置き、香炉に礼をして聞香。盆に戻して、流れに戻す。水のような香りだった。
香元の声がする。お手元の薫香録をご覧ください。文字が浮かんでくる。物語が続く。
その晩、夢に妻が現れた。50年以上前、小料理屋で初めて出会った姿で、こんな歌を歌っていた。それは酔うと翁が愛唱する詩だった。
君歌陽叛児 (陽気な歌を歌ってよ)
妾勧新豊酒 (わたしのお酒を飲み干して)
何処最人憂 (何がそんなに悲しいの)
烏鳴白門柳 (カラスが柳で鳴いている)
烏鳴柳花隠 (カラスもあそこに泊まるのね)
君酔妾家留 (あなたもおうちに泊ってよ)
博山爐中沈香火(香炉の中の沈香火)
双煙一気紫霞凌(ふたり一気に昇天ね)
詩「爐中沈香火(ろちゅうじんこうか)」 李白(唐701~762)
翌朝、翁は、楽しい、嬉しい、愛おしい、喜びの全部が混ざった表情を浮かべて、旅立っていました。
次は、宗の時代に生まれた、香の10徳という有名な詩のお香です。
香満ちました。
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陽が落ちても町は暑さがむんむんしている。
今夜は、喜多方ラーメンで冷やし中華にしてもらおう。
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