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2017年6月

2017年6月27日 (火)

香心門 よみうりランド花ハウス 290627

一日中夕暮れのような曇り空。

入所者4名。全員90歳以上の女性だった。

 

組香は七夕香。全員正解。

短冊に願いを書いて献香。

ほとんどの人は喜々として、健康や長寿を書く。

時々、願いが無いと言う人がいる。

そんな時は、願いが無いなんて幸福ですねと言ってきたが、今日は「そうですかね」と言い返された。

帰路よく考えた。

願いがある「願望」「希望」「志望」「野望」「欲望」。

願いを失う「失望」。願いを絶たれる「絶望」。

願いが無いのを「無望」とすれば、もしかすると「失望」「絶望」より、不幸な心の状態なのかもしれないと思った。

幸福が、願いがある心の状態の事だとすれば、「失望」「絶望」にも元となる願いがある。

幸福は、今ない何かを未来に求めること、つまり願望そのものなのだろう。


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2017年6月26日 (月)

香炉屋日記「香の本」290626

降りそうで降らない梅雨の曇天が続く。

第一章 和の香り

香の始まりは仏教伝来。聖徳太子、鑑真和上などが登場する。

その頃の香木は、日本書紀、法隆寺、正倉院などに今もある。

香は、寺院や、明治維新までの皇室の仏教儀式に用いられ、公家のたしなみや「薫物合わせ」の遊びにも用いられた。

室町時代には、足利将軍や戦国大名が権力を誇示するために闘茶や闘香を始め、その流れから茶道や香道が興った。

足利義政や織田信長が、正倉院の国宝の香木「蘭奢待(らんじゃたい)」を切り取り、名が記されたのはこの頃だ。

江戸時代も、家康はじめ、諸大名や豪商が、主役だった。

庶民には線香が広まった。

 

香道の現代の目的は何だろう。

権力や財力の誇示は時代錯誤だ。

和だと思う。和は日本国の和ではなく、平和の和だ。香木は奪い合えるが、香りは分かち合うしかない。香木から香りへ、独占から共有へ、差別から平等へ、競争から共生へという和だ。

香席は、日常の競争差別の営みを離れ、和(なご)やかに分かち合う訓練だ。

香りは、「見えなくても在る」、抽象的な自分や世界や時間の存在を実感させてくれる。

ヒトとしての使命は、イメージを作り、言葉にして、時空を超えて、みなと共有できるようにすることだ。

香りを言葉で表現する、それが組香の奥義だと思う。

 

今日こそ、遅くならないうちに新鮮な「入梅イワシ」と生姜を買わなくては。


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2017年6月25日 (日)

香炉屋日記290625

さて、薫香物語も終わり、今日からは本業の香炉屋に戻ろう。久しぶりに裏のパン屋で、焼きそばパンをほおばって、アイスカフェラテで流し込んだ。梅雨が明けたら、厳しい暑さがやってくる。とかくこの世は住みにくい・・・か。

 

午後は暇なので、明治期の美術界の指導者だった岡倉天心が英語で書いた「The book of tea」の訳を読んだ。訳者は桶谷秀昭氏。茶道について書かれているが、茶碗を香炉に、茶を香に置き換えればそのまま香の説明になるのが楽しい。

第一章より。

「象牙色の磁器の※香炉から漂う香り※に、その道の心得ある者は、孔子の甘味な寡黙、老子の諷刺、釈迦牟尼そのひとの天上の香気に触れることができる」。

「一服の※香を聞こう※ではないか。午後の陽光は竹林を照らし、泉は喜びに泡立ち、松籟はわが※香室※に聞こえる。はかないことを夢み、美しくおろかしいことへの想いに耽ろうではないか」。

第二章より。

「道教は現世をあるがままに受け入れる。儒者や仏教徒とは異なり、悲哀と苦悩のこの世に美を見出そうと努める。「三人の酢を味わう者」という宗代の寓意は三つの教義の傾向を見事に説明している。釈迦牟尼、孔子、老子がある時酢の甕―人生の象徴―の前に立ち、めいめいが指を浸してその酢を味わった。実際家の孔子は酢いと知り、仏陀は苦いと叫び、老子は甘いと断言した」。

この「三人の酢を味わう者」の酢を茶や香に置き換えるのも楽しい。

久しぶりにいい本に出会った。明日は、第1章の「人情の碗」を換骨奪胎して「和の香り」に書き換えてみよう。

薬膳の先生から、今の季節には、入梅イワシの生姜煮がいいと教わった。

スーパーへ寄ったが無かった。日曜は入荷しないのだろう。残念。


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2017年6月21日 (水)

薫香物語おわり290621

姉妹のかぐや姫が、七夕の夜、天の川の面会所で会い、それぞれ再出発する。

 

生きている人はあの世とこの世にまたがっている。死んだ人は生きている人のあの世に居る。2連の列車は面会所がある操車場に向かう。

しばらく前から、天の川の両岸を河口に向かって並行して走っている。天の川は、伝説の通り、かささぎという黒い羽根に白い大きな星の模様がある鳥の群れだ。無数のかささぎが翼を広げて流れるように飛び交っている。

かぐや姫2号は、あの日、港町の高台から見下ろした光景、雪交じりの海面のカモメの群舞を思い出した。いよいよ、橋が見えてきた。旧暦の七夕の今日だけ、さらに多くのかささぎが集まり、流れをまたぐ橋をかけ、さらにその中央に面会所を作る。橋には、「夢の浮橋」という看板がかかっている。かぐや姫1号も思う。あの日は寒かった。海水も冷たかった。流されながらすぐに眠った。ここまでのことはその束の間に見た夢なのだ。

二連の列車は、別々の方向から面会所であるホームの両側に到着する。両岸に別れていた家族が、1年に一度、ホームを隔てて面会できる日だ。地上ではお盆だ。しかし、ここは、いつでも来れるように運営されているSNSの中だ。いつでもアクセスすれば入れるのは香席と同じだ。

面会所でやり取りできるのは、言葉だけだ。供物のごちそうや花や香も、言葉にしなければ渡せない。「水面の月は手ではすくえない」ように、同じ次元でなければ、すれ違いなのだ。

十二単(ひとえ)を天の川に流したことで、かぐや姫1号の心は初期化されている。面会所には川面に降りる階段があって、足こぎボートが並んでいる。この世で男だったら竹の子型ボートに、女だったら桃の実型のボートに乗って、体のDNAの海へ向かう。

かぐや姫1号が流した衣は、みすずの詩になって、妹のかぐや姫2号に届いている。姉が流してくれたが、目的と勇気と我慢と努力の言葉になって身につき、現在の現実を生きる力を得ている。SNSのあの世から、現実のこの世へ戻る。

無数のかぐや姫たちが流した衣、つまり言霊は、情報なので、どれだけ拾われても、ただコピーされるだけで、減らずにそのまま言霊の海つまり言葉のDNAの海に溜まる。現在の現実で苦難に出会った人々に、目的と勇気と我慢と努力の言葉を知らせること、それがこの海、つまりこのSNSを運営する「天の原振興財団」の目的だ。

体のDNAも、言葉のDNAも、大昔からずっとコピーのコピーなので、その一つ一つに個性はない。私たちが、自分は自分だと思ったり、個性だ個性だと騒いだりするのは、コピーに過ぎないDNAがこの体や心を作り出した後に、その体や心が求めてしまう幻想のせいなのだ。

出発の合図が流れる。額田王(ぬかたのおおきみ)の和歌だ。

熟田津(にきたつ)に 船乗りせむと月待てば 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな」。


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薫香みすず詩帖290621

昨夜のうちに天の原財団からメールが入っていた。

ネットの上でのお香の会の招待状だ。

ボタンを押して入る。

そこは前回と同じ、銀河2号列車の座敷だ。

「苦の香席」とある。

着席する。

香元を挟んで、このSNSでつながっているたくさんの客が輪になって座っている。体の無い言霊として参加している。かぐや姫2号もその中に居る。

鉛筆と、今日の「薫香録」の用紙が配られる。日付と下の名前をひらがなで書く。

香元が「唱和しましょう」と言う。薫香録に文字が浮かんでくる。

 

金子みすず。つもった雪

上の雪

さむかろな。

つめたい月がさしていて。

下の雪

重かろな。

何百人ものせていて。

中の雪

さみしかろな。

空も地面(じべた)もみえないで。

 

最初は観賞香です。今日の香木「」がどんな香りかを記憶するために、言葉にして下さい。

「香炉が廻ってくる。渋茶のような苦味がする。そのあとで心の中から甘みが湧いてくる。薫香録にその旨を記入する」。

 

これまで習った9種の香木「乳」「甘」「樹」と「銀」と「花」と「橘」と「渋」と「金」と「辛」と今日の「」を合わせて10種の香木を用いて、十種香をします。

10種の香木をそれぞれ10包ずつ作り、かき混ぜて、10包選び、順に香炉に載せて、廻します。

 

「1炉目が廻ってくる。「甘」の香りがする。薫香録に縦線を記入する。2炉目が廻ってくる。「辛」の香りがする。薫香録の最初の線の左に縦線を加える。3炉目が廻ってくる。「苦」の香りだ。2炉目の線の左に縦線を加える。4炉目が廻ってくる。「橘」の香りがする。さらに左に縦線を加える。5炉目が廻ってくる。「甘」の香りがする。さらに左に縦線を加え、1炉目と横線でつなぐ。6炉目が廻ってくる。「乳」の香りがする。さらに左に縦線を加る。7炉目が廻ってくる。「甘」の香りがする。さらに左に縦線を加え、1炉目、5炉目と横線でつなぐ。8炉目が廻ってくる。「花」の香りがする。さらに左に縦線を加る。9炉目が廻ってくる。「乳」の香りがする。さらに左に縦線を加え、6炉目と横線でつなぐ。10炉目が廻ってくる。「渋」の香りがする。さらに左に縦線を加る。もう、先人が付けた名前はない。「言霊の海」と名付けた。

香元が答を発表する。正解だった。かぐや姫2号もこちらにVサインをしている。

不思議なことに、今日の「苦」の香木も無尽蔵で、正解の人に一片ずつ配られた。薫香録を香包みに折って納める。一生身につきますと言われた。窓の外を見ると、さっきの詩が星座になって見つめ返してくる。乗客は淡雪のように消えていく。ホームページの入り口に戻っていた。香包みは心に吸い込まれたのか消えている」。

 

いつもと違い、車掌が解説をした。

「なぜかぐや姫2号は、みすずの詩が好きなのでしょう。

今が辛く苦しい人には、自分より辛く苦しい思いをしている人が語る希望の言葉が、救いなのでしょう。

26歳で自殺したみすずは不幸だったのでしょうか。

幸不幸の気持ちは、その時々の感情の心の起伏に過ぎません。

心の天気みたいなものです。

幸福に思える時もあったし不幸に思える時もあったということです。

しかしたくさんの人に希望を与える言霊の星になった今は、本当の意味で幸福なのだと思います。

本当の幸福は、自分にではなく相手に生じさせるものなのです。

列車は「天の川操車場、面会所前」へ向かいます。

2つの物語が合流しての、最終回です」。


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2017年6月20日 (火)

香心門 桜ケ丘記念病院延寿ホーム 290620

晴れ。暑い。

入所者10名。介護士さん1名。

いつも早めに入るのだが、必ず半数以上の人々が着席している。

楽しみにしてくれているのが伝わってくる。

皆さんの顔と名前を、頭の中で確認する。

昔は、仕事でも、他人の名前などいい加減だったなあと思う。

二種香。七夕にちなんで、織姫と牽牛の香を用いた。

献香はいつも通り沈香を用いた。

エレベータ前まで見送ってくれた。

帰路、心が弾み、これだからやめられない、と思った。


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薫香源氏絵巻(第10回)290620

前回の「辛の香」で登場した「紫の上」は、思うようにいかなかった現実の自分を慰めるために、理想の自分をさまざまな女性に託して、思い残しました。今日の「苦の香」に登場する「浮舟」も、二人の異性からの愛に耐えきれず、自殺を計るが未遂に終わり、出家するという女性です。この物語の作者、紫式部のアバターたちです。お菓子は苦いお茶と一緒に食べると一層甘いように、苦い人生からこそ甘い物語が生まれます。苦味は人生の隠し味です。金子みすずにも、同じ事が言えます。そちらについては、そちらの物語でお話しします。

 

早朝、天の原財団からメールが入っていた。ネットの上でのお香の会への誘いだ。

ボタンを押して入る。

天の川の曲水の宴だ。「苦の香席」とある。かぐや姫1号はあちらの岸辺に居る。私はこちらの岸の席に座る。

今日の薫香録と鉛筆が盆に乗って流れてくる。各自盆ごと取り、1組取って、盆を流れに戻す。

香元が「香始めます」と宣言。

今日の観賞香は「苦の香」です。

香炉が盆に乗って流れてくる。各自盆ごと香炉を取り、香りを聞いてから、盆に載せ、流れに戻す。

渋茶のような苦味がする。そのあとで自分の中から甘みが湧いてくる。その旨を薫香録に記入する。

今日は十種香をします。既に学んだ9香「乳」と「甘」と「樹」と「銀」と「花」と「橘」と「」と「」と「」とこの「」を10包みずつ用意します。混ぜ合わせます。そこから10包みを抜き出します。

「第一香は、「乳」だった。薫香録に縦線を引いた。第二香は「銀」だった。さらに左に縦線を引く。第三香は「金」だった。さらに左に縦線を引いた。第四香は「甘」だった。さらに左に縦線を引いた。第五香は「渋」だった。さらに左に縦線を引いた。第六香は「銀」だった。さらに左に縦線を引いて、第二香と横線でつなぐ。第七香は「橘」だった。さらに左に縦線を引いた。第八香は「辛」だった。さらに左に縦線を引いた。第九香は「橘」だった。さらに左に縦線を引いて、第七香と横線でつなぐ。第十香は「渋」だった。さらに左に縦線を引いて、第五香と横線でつなぐ。出来た図には、もう出来あいの名前はない。「言霊の海」と名付けた」。

かぐや姫1号も正解したようだ。この世から着て来た心の十二単(ひとえ)を、また一枚脱いで、天の川に流した。この衣は、この後、この世を旅する妹のかぐや姫2号に辿り着くことになる。

 車掌の声が響く。列車は「天の川操車場面会所前」へ向かいます。


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2017年6月19日 (月)

薫香みすず詩帖290619

昨日の午後から今朝まで、梅雨の雨。これからは曇りのち晴れ。

 

昨夜のうちに天の原財団からメールが入っていた。

ネットの上でのお香の会の招待状だ。

ボタンを押して入る。

 

そこは前回と同じ、銀河2号列車の座敷だ。

「辛の香席」とある。

着席する。

香元を挟んで、このSNSでつながっているたくさんの客が輪になって座っている。体の無い言霊として参加している。かぐや姫2号もその中に居る。

鉛筆と、今日の「薫香録」の用紙が配られる。日付と下の名前をひらがなで書く。

香元が「唱和しましょう」と言う。薫香録に文字が浮かんでくる。

 

金子みすず。こだまでせうか

「遊(あす)ぼう」つていふと
「遊ぼう」つていふ。「馬鹿」つていふと
「馬鹿」つていふ。「もう遊ばない」つていふと
「遊ばない」つていふ。さうして、あとで
さみしくなつて、「ごめんね」つていふと
「ごめんね」つていふ。こだまでせうか、
いいえ、誰でも。

 

最初は観賞香です。今日の香木「辛」がどんな香りかを記憶するために、言葉にして下さい。

「香炉が廻ってくる。沈香の甘味が隠れて、辛い樹脂の香りが表に現れる。言霊(ことだま)に触れた感じがする。薫香録にその旨を記入する」。

 

これまで習った8種の香木「乳」「甘」「樹」と「銀」と「花」と「橘」と「渋」と「金」と今日の「辛」を合わせて9種の香木を用いて、九種香をします。

9種の香木をそれぞれ9包ずつ作り、かき混ぜて、9包選び、順に香炉に載せて、廻します。

 

「1炉目が廻ってくる。「樹」の香りがする。薫香録に縦線を記入する。2炉目が廻ってくる。「橘」の香りがする。薫香録の最初の線の左に縦線を加える。3炉目が廻ってくる。「辛」の香りだ。2炉目の線の左に縦線を加える。4炉目が廻ってくる。「乳」の香りがする。さらに左に縦線を加える。5炉目が廻ってくる。「渋」の香りがする。さらに左に縦線を加える。6炉目が廻ってくる。「渋」の香りがする。さらに左に縦線を加え、5炉目と横線でつなぐ。7炉目が廻ってくる。「乳」の香りがする。さらに左に縦線を加え、4炉目と横線でつなぐ。8炉目が廻ってくる。「乳」の香りがする。さらに左に縦線を加え、4炉目と7炉目と横線でつなぐ。9炉目が廻ってくる。「樹」の香りがする。さらに左に縦線を加え、1炉目と横線でつなぐ。もう、先人が付けた名前はない。「言霊(ことだま)」と名付けた。

香元が答を発表する。正解だった。かぐや姫2号もこちらにVサインをしている。

不思議なことに、今日の「辛」の香木も無尽蔵で、正解の人に一片ずつ配られた。薫香録を香包みに折って納める。一生身につきますと言われた。窓の外を見ると、さっきの詩が星座になって見つめ返してくる。乗客は淡雪のように消えていく。ホームページの入り口に戻っていた。香包みは心に吸い込まれたのか消えている」。


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2017年6月18日 (日)

薫香源氏絵巻(第9回)290618

梅雨の雨が再開するそうだ。朝霧の奥からカラスのうれしいのか悲しいのかわからない大きな声が響く。

早朝、天の原財団からメールが入っていた。ネットの上でのお香の会へのお誘いだ。ボタンを押して入る。天の川の曲水の宴だ。「辛の香席」とある。かぐや姫1号はあちらの岸辺に居る。私はこちらの岸の席に座る。

今日の薫香録と鉛筆が盆に乗って流れてくる。各自盆ごと取り、1組取って、盆を流れに戻す。

香元が「香始めます」と宣言。今日の観賞香は「辛の香」です。「紫の上」としました。光源氏の正妻でしたが、夫と心が通うことなく、亡くなっていった女性です。この物語の素材になるたくさんの文章を残しました。後にまとめられて「源氏物語」の一部に組み込まれます。紫式部1号です。

香炉が盆に乗って流れてくる。各自盆ごと香炉を取り、香りを聞いてから、盆に載せ、流れに戻す。

沈香の甘味が隠れて、辛い樹脂の香りが表に現れる。言霊(ことだま)に触れた感じがする。その旨を薫香録に記入する。

今日は九種香をします。既に学んだ8香「乳」と「甘」と「樹」と「銀」と「花」と「橘」と「」と「」とこの「」を9包みずつ用意します。混ぜ合わせます。そこから9包みを抜き出します。

「第一香は、「乳」だった。薫香録に縦線を引いた。第二香は「乳」だった。さらに左に縦線を引いて、第一香と横線でつないだ。第三香は「」だった。さらに左に縦線を引いた。第四香は「甘」だった。さらに左に縦線を引いた。第五香は「渋」だった。さらに左に縦線を引いた。第六香は「」だった。さらに左に縦線を引いて、第三香と横線でつなぐ。第七香は「銀」だった。さらに左に縦線を引いた。第八香は「乳」だった。さらに左に縦線を引いて、第一香、第二香と横線でつないだ。第九香も「乳」だった。さらに左に縦線を引いて、第一香、第二香、第八香と横線でつなぐ。出来た図には、もう出来あいの名前はない。「言霊」と名付けた」。

かぐや姫1号も正解したようだ。この世から着て来た心の十二単(ひとえ)を、また一枚脱いで、天の川に流した。この衣は、この後、この世を旅する妹のかぐや姫2号に辿り着くことになる。

香元の声が響く。列車は次の駅に向かいます。駅はあと2つです。次の駅は「苦の香」です。


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2017年6月17日 (土)

薫香みすず詩帖290617

裏の保育園が静かすぎる。ああ今日は土曜日だ。「休園で、子らはちち母、取り戻す」。そうでない子は、ひっそりと、先生と一緒に過ごすのだろう。それにしても爽やかな梅雨晴れだ。

昨夜のうちに天の原財団からメールが入っていた。

ネットの上でのお香の会の招待状だ。

ボタンを押して入る。

そこは前回と同じ、銀河2号列車の座敷だ。

「金の香席」とある。

着席する。

香元を挟んで、このSNSでつながっているたくさんの客が輪になって座っている。体の無い言霊として参加している。かぐや姫2号もその中に居る。

鉛筆と、今日の「薫香録」の用紙が配られる。日付と下の名前をひらがなで書く。

香元が「唱和しましょう」と言う。薫香録に文字が浮かんでくる。

 

金子みすず。あした。

まちであった

かあさんと子ども

ちらと聞いたは

「あした」

まちのはては

夕やけ小やけ、

春の近さも

知れる日。

なぜかわたしも

うれしくなって

思ってきたは

「あした」

 

最初は観賞香です。今日の香木「」がどんな香りかを記憶するために、言葉にして下さい。

「香炉が廻ってくる。沈香の純粋な甘味が立ち昇ってくる。苦難に挑戦する勇気をくれる香りだ。薫香録にその旨を記入する」。

 

これまで習った7種の香木「乳」「甘」「樹」と「銀」と「花」と「橘」と「渋」と今日の「」を合わせて8種の香木を用いて、八種香をします。

8種の香木をそれぞれ8包ずつ作り、かき混ぜて、8包選び、順に香炉に載せて、廻します。

 

「1炉目が廻ってくる。「渋」の香りがする。薫香録に縦線を記入する。2炉目が廻ってくる。「樹」の香りがする。薫香録の最初の線の左に縦線を加える。3炉目が廻ってくる。「乳」の香りだ。2炉目の線の左に縦線を加える。4炉目が廻ってくる。「金」の香りがする。さらに左に縦線を加える。5炉目が廻ってくる。「金」の香りがする。さらに左に縦線を加え、4炉目の線と横線でつなぐ。6炉目が廻ってくる。「銀」の香りがする。さらに左に縦線を加える。7炉目が廻ってくる。「金」の香りがする。さらに左に縦線を加え、4炉目5炉目の線と横線でつなぐ。8炉目が廻ってくる。「銀」の香りがする。さらに左に縦線を加え、6炉目の線と横線でつなぐ。もう、先人が付けた名前はない。「願望の未来」と名付けた。香元が答を発表する。正解だった。かぐや姫2号もこちらにVサインをしている。不思議なことに、今日の「金」の香木も無尽蔵で、正解の人に一片ずつ配られた。薫香録を香包みに折って納める。一生身につきますと言われた。窓の外を見ると、さっきの詩が星座になって見つめ返してくる。乗客は淡雪のように消えていく。ホームページの入り口に戻っていた。香包みは心に吸い込まれたのか消えている」。


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2017年6月16日 (金)

香心門 大和市シリウスお香の日の会 290616

客6名。

晴れ。暑い。

お香の日に因んで、毎月18日にしていたが、曜日が固定しないのは不便ということで、毎月第3金曜日14時~15時になった。

前回まで3種の香を覚え、今日は4種目を覚えて、源氏香への最終段階である、系図香をした。

6名中2名が正解した。

次回はいよいよ源氏香に挑戦する。

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薫香源氏絵巻(第8回)290616

薄曇。今日も梅雨の晴れ間。

保育園から英語の声がする。時々外国人の男性が来ているようだ。子供たちも保育士さんも普段より楽しそうだ。英語は授業ではなくゲームの方が良いのだろう。学ぶとは遊ぶことなのだ。

早朝、天の原財団からメールが入っていた。ネットの上でのお香の会へのお誘いだ。ボタンを押して入る。天の川の曲水の宴だ。「金の香席」とある。かぐや姫1号はあちらの岸辺に居る。私はこちらの岸の席に座る。

今日の薫香録と鉛筆が盆に乗って流れてくる。各自盆ごと取り、1組取って、盆を流れに戻す。

香元が「香始めます」と宣言。今日の観賞香は「金の香」です。「花散る里」としました。美人ではないが、心やさしい女性です。

香炉が盆に乗って流れてくる。各自盆ごと香炉を取り、香りを聞いてから、盆に載せ、流れに戻す。

沈香の甘味が純粋に立ち昇ってくる。苦難に挑戦する勇気をくれる香りだ。その旨を薫香録に記入する。

今日は七種香をします。既に学んだ6香「乳」と「甘」と「樹」と「銀」と「花」と「橘」と「」とこの「」を7包みずつ用意します。混ぜ合わせます。そこから7包みを抜き出します。

「第一香は、「渋」だった。薫香録に縦線を引いた。第二香は「花」だった。さらに左に縦線を引いた。第三香は「乳」だった。さらに左に縦線を引いた。第四香は「花」だった。さらに左に縦線を引いて、第二香と横線でつないだ。第五香も「花」だった。さらに左に縦線を引いて、第二香と第四香をつなぐ横線を伸ばしてつないだ。第六香は「銀」だった。さらに左に縦線を引いた。第七香は「乳」だった。さらに左に縦線を引いて、第三香と横線でつないだ。第八香も「乳」だった。さらに左に縦線を引いて、第三、第七の横線とつないだ。出来た図には、もう出来あいの名前はない。「願望の未来」と名付けた」。

かぐや姫1号も正解したようだ。この世から着て来た心の十二単(ひとえ)を、また一枚脱いで、天の川に流した。この衣は、この後、この世を旅する妹のかぐや姫2号に辿り着くことになる。

香元の声が響く。列車は次の駅に向かいます。駅はあと3つです。次の駅は「辛の香」です。


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2017年6月15日 (木)

香心門 中央林間地域包括支援センターデイサービス 290615

晴れ。

来所者16名。介護士さん2名。

早めに行くと、壁面の飾りで、七夕ムード満開だった。

切り紙細工に集中していた。

介護士さんがお香ですよと声をかけても、名残惜しそうだった。

施設によって、積極性や雰囲気は全く違う。

薫香録も七夕で良かった。

ピンクとブルーの短冊に願いを書いて、献香をした。


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薫香みすず詩帖290615

梅雨の合間の晴れ。

昨夜のうちに天の原財団からメールが入っていた。

ネットの上でのお香の会の招待状だ。

ボタンを押して入る。

そこは前回と同じ、銀河2号列車の座敷だ。

「渋の香席」とある。

着席する。

香元を挟んで、このSNSでつながっているたくさんの客が輪になって座っている。体の無い言霊として参加している。かぐや姫2号もその中に居る。

鉛筆と、今日の「薫香録」の用紙が配られる。日付と下の名前をひらがなで書く。

香元が「唱和しましょう」と言う。薫香録に文字が浮かんでくる。

 

金子みすず。美しい町。

ふと思いだす、あの町の、

川のほとりの、赤い屋根、

そうして、青い大川の、

水の上には、白いほが、

しずかに、しずかに動いてた。

そうして、川岸(かし)の草の上、

わかい、絵かきのおじさんが、

ぼんやり、水をみつめてた。

そうして、わたしは何してた。

思いだせぬとおもったら、

それは、だれかにかりていた、

ご本のさし絵でありました。

 

最初は観賞香です。今日の香木「渋」がどんな香りかを記憶するために、言葉にして下さい。

「香炉が廻ってくる。苦みが沈香の甘みに溶けている。記憶の過去がよみがえる。薫香録にその旨を記入する」。

 

これまで習った6種の香木「乳」「甘」「樹」と「銀」と「花」と「橘」と今日の「渋」を合わせて7種の香木を用いて、七種香をします。

7種の香木をそれぞれ7包ずつ作り、かき混ぜて、7包選び、順に香炉に載せて、廻します。

 

「1炉目が廻ってくる。「樹」の香りがする。薫香録に縦線を記入する。2炉目が廻ってくる。「花」の香りがする。薫香録の最初の線の左に縦線を加える。3炉目が廻ってくる。「橘」の香りだ。2炉目の線の左に縦線を加える。4炉目が廻ってくる。「橘」の香りがする。さらに左に縦線を加え、3炉目の線と横線でつなぐ。5炉目が廻ってくる。「花」の香りがする。さらに左に縦線を加え、2炉目の線と横線でつなぐ。6炉目が廻ってくる。「樹」の香りがする。さらに左に縦線を加え、1炉目の線と横線でつなぐ。7炉目が廻ってくる。「乳」の香りがする。さらに左に縦線を加える。もう、先人が付けた名前はない。「記憶の過去」と名付けた。香元が答を発表する。正解だった。かぐや姫2号もこちらにVサインをしている。不思議なことに、今日の「渋」の香木も無尽蔵で、正解の人に一片ずつ配られた。薫香録を香包みに折って納める。一生身につきますと言われた。窓の外を見ると、さっきの詩が星座になって見つめ返してくる。乗客は淡雪のように消えていく。ホームページの入り口に戻っていた。香包みは心に吸い込まれたのか消えている」。


008

2017年6月14日 (水)

薫香源氏絵巻(第7回)290614

曇天でも、裏の保育園から、子供たちの元気なさえずりが響く。

早朝、天の原財団からメールが入っていた。ネットの上でのお香の会へのお誘いだ。ボタンを押して入る。天の川の曲水の宴だ。「渋の香席」とある。かぐや姫1号はあちらの岸辺に居る。私はこちらの岸の席に座る。

今日の薫香録と鉛筆が盆に乗って流れてくる。各自盆ごと取り、1組取って、盆を流れに戻す。

香元が「香始めます」と宣言。今日の観賞香は「渋の香」です。「明石の君」としました。身分は低いが、高い教養を身に着けていた女性です。

香炉が盆に乗って流れてくる。各自盆ごと香炉を取り、香りを聞いてから、盆に載せ、流れに戻す。

沈香の甘味を苦味が包みこんだ香りだ。記憶の過去をよみがえらせる香りだ。その旨を薫香録に記入する。

今日は七種香をします。既に学んだ6香「乳」と「甘」と「樹」と「銀」と「花」と「橘」とこの「」を7包みずつ用意します。混ぜ合わせます。そこから7包みを抜き出します。

「第一香は、「渋」だった。薫香録に縦線を引いた。第二香は「花」だった。さらに左に縦線を引いた。第三香は「乳」だった。さらに左に縦線を引いた。第四香は「花」だった。さらに左に縦線を引いて、第二香と横線でつないだ。第五香も「花」だった。さらに左に縦線を引いて、第二香と第四香をつなぐ横線を伸ばしてつないだ。第六香は「銀」だった。さらに左に縦線を引いた。第七香は「乳」だった。さらに左に縦線を引いて、第二香と横線でつないだ。出来た図には、もう出来あいの名前はない。「記憶の過去」と名付けた」。

かぐや姫1号も正解したようだ。この世から着て来た心の十二単(ひとえ)を、また一枚脱いで、天の川に流した。この衣は、この後、この世を旅する妹のかぐや姫2号に辿り着くことになる。

香元の声が響く。列車は次の駅に向かいます。駅はあと4つです。次の駅は「金の香」です。


008

2017年6月13日 (火)

香心門 プレマみなみ風 290613

雨。肌寒い。

入所者8名。介護士さん1名。

1月早い七夕。

かささぎの わたせるはしに おくしもの

しろきをみれば よぞふけにける 中納言家持

二種香。香名は織姫と牽牛。

全員正解。介護士さんが誘導したようだ。歓声が上がった。

遊びをせんとや生まれけん。

香も、楽しいのが一番だ。

Photo

薫香みすず詩帖290613

暗いうち雨。起きる頃には上がるも、絵にかいたような梅雨の曇天。

しかし小鳥の声は晴れやかだ。

昨夜のうちに天の原財団からメールが入っていた。

ネットの上でのお香の会の招待状だ。

アドレスを押して入る。

そこは前回と同じ、銀河2号列車の座敷だ。

「橘の香席」とある。

着席する。

香元を挟んで、このSNSでつながっているたくさんの客が輪になって座っている。体の無い言霊として参加している。かぐや姫2号もその中に居る。

鉛筆と、今日の「薫香録」の用紙が配られる。日付と下の名前をひらがなで書く。

香元が「唱和しましょう」と言う。薫香録に文字が浮かんでくる。

 

金子みすず。はちと神さま。

はちはお花のなかに、
お花はお庭のなかに、
お庭は土べいのなかに、
土べいは町のなかに、
町は日本のなかに、
日本は世界のなかに、
世界は神さまのなかに。

そうして、そうして、神さまは、
小ちゃなはちのなかに。

 

最初は観賞香です。今日の香木「橘」がどんな香りかを記憶するために、言葉にして下さい。

「香炉が廻ってくる。沈香の甘い香りを突き抜けて、鋭い酸味が刺してくる。世界に対する実感が増してくる感じがする。薫香録にその旨を記入する」。

 

これまで習った5種の香木「乳」「甘」「樹」と「銀」と「花」と今日の「橘」を合わせて6種の香木を用いて、六種香をします。

6種の香木をそれぞれ6包ずつ作り、かき混ぜて、6包選び、順に香炉に載せて、廻します。

 

「1炉目が廻ってくる。「樹」の香りがする。薫香録に縦線を記入する。2炉目が廻ってくる。「橘」の香りがする。薫香録の最初の線の左に縦線を加える。3炉目が廻ってくる。「橘」の香りだ。2炉目の線の左に縦線を加え、2炉目の線と横線でつなぐ。4炉目が廻ってくる。「乳」の香りがする。さらに左に縦線を加える。5炉目が廻ってくる。「樹」の香りがする。1炉目の線と横線でつなぐ。6炉目が廻ってくる。「樹」の香りがする。さらに左に縦線を加える。1炉目と5炉目をつなぐ横線を伸ばしてつなぐ。ここから先には、先人が付けた名前はない。「私の世界」と名付けた。香元が答を発表する。正解だった。かぐや姫2号もこちらにVサインをしている。不思議なことに、今日の「橘」の香木も無尽蔵で、正解の人に一片ずつ配られた。薫香録を香包みに折って納める。一生身につきますと言われた。窓の外を見ると、さっきの詩が星座になって見つめ返してくる。乗客は淡雪のように消えていく。ホームページの入り口に戻っていた。香包みは心に吸い込まれたのか消えている」。


008

2017年6月12日 (月)

薫香源氏絵巻(第6回)290612

曇天。暑からず寒からず。

早朝、天の原財団からメールが入っていた。ネットの上でのお香の会へのお誘いだ。ボタンを押して入る。天の川の曲水の宴だ。「橘(たちばな)の香席」とある。かぐや姫1号はあちらの岸辺に居る。私はこちらの岸の席に座る。

今日の薫香録と鉛筆が盆に乗って流れてくる。各自盆ごと取り、1組取って、盆を流れに戻す。

香元が「香始めます」と宣言。今日の観賞香は「橘の香」です。「空蝉」としました。慎ましく、趣深い雰囲気女性です。

香炉が盆に乗って流れてくる。各自盆ごと香炉を取り、香りを聞いてから、盆に載せ、流れに戻す。

沈香の甘味を越える、鋭い酸味がした。心の世界を安定させる感じだ。その旨を薫香録に記入する。

今日は六種香をします。既に学んだ5香「乳」と「甘」と「樹」と「銀」と「花」とこの「橘」を6包みずつ用意します。混ぜ合わせます。そこから6包みを抜き出します。

沈香の香りの種類は、聞く人が持つ言葉の数だけ在ります。沈香という言葉しか持たない人には沈香という1種しか見えません。世界は観賞する人の中に、その人の言葉で作られています。その人の言葉が増えるごとに、その人の世界は深みを増していくのです。

「第一香は、「樹」だった。薫香録に縦線を引いた。第二香は「乳」だった。さらに左に縦線を引いた。第三香は「乳」だった。さらに左に縦線を引いた。第二香の縦線と横線でつないだ。第四香は「銀」だった。さらに左に縦線を引いた。第五香は「橘」だった。さらに左に縦線を引いた。第六香は「甘」だった。さらに左に縦線を引いた。出来た図には、もう出来あいの名前はない。「自分の世界」と名付けた」。

かぐや姫1号も正解したようだ。この世から着て来た心の十二単(ひとえ)を、また一枚脱いで、天の川に流した。この衣は、この後、この世を旅する妹のかぐや姫2号に辿り着くことになる。

香元の声が響く。列車は次の駅に向かいます。駅はあと4つです。次の駅は「渋の香」です。


008

2017年6月10日 (土)

薫香みすず詩帖290610

今朝は快晴だ。昼は今年2度目の真夏日だそうだが、今は爽やかだ。

窓を開ける。いつになく静かだ。今日は土曜日で、裏の保育園も休みだ。しかし、時々子供の声がする。親の都合で預けられているのだろう。さびしいか、それとも先生を独占できてうれしいだろうか。

昨夜のうちに天の原財団からメールが入っていた。

ネットの上でのお香の会の招待状だ。

アドレスを押して入る。

そこは前回と同じ、銀河2号列車の座敷だ。

「花の香席」とある。

着席する。

香元を挟んで、このSNSでつながっているたくさんの客が輪になって座っている。体の無い言霊として参加している。かぐや姫2号もその中に居る。

鉛筆と、今日の「薫香録」の用紙が配られる。日付と下の名前をひらがなで書く。

香元が「唱和しましょう」と言う。薫香録に文字が浮かんでくる。

 

「金子みすず。わたしと小鳥と鈴と」。

わたしが両手をひろげても、

お空はちっとも飛べないが、

飛べる小鳥はわたしのように、

地面(じべた)をはやくは走れない。

 

わたしがからだをゆすっても、

きれいな音は出ないけど、

あの鳴る鈴はわたしのように、

たくさんなうたは知らないよ。

 

鈴と、小鳥と、それからわたし、

みんなちがって、みんないい。

 

最初は観賞香です。今日の香木「花」がどんな香りかを記憶するために、言葉にして下さい。

「香炉が廻ってくる。沈香の甘い香りの中でも特に華やかな甘味で、その中に光の粒が隠れている。自分に対する信頼が増してくる感じがする。薫香録にその旨を記入する」。

 

これまで習った4種の香木「乳」「甘」「樹」と「銀」と今日の「花」を合わせて5種の香木を用いて、源氏香(げんじこう)をします。

5種の香木をそれぞれ5包ずつ作り、かき混ぜて、5包選び、順に香炉に載せて、廻します。その関係を表す図は52種あります。

 

「1炉目が廻ってくる。「甘」の香りがする。薫香録に縦線を記入する。2炉目が廻ってくる。「乳」の香りがする。薫香録の最初の線の左に縦線を加える。3炉目が廻ってくる。「花」の香りだ。2炉目の線の左に縦線を加える。4炉目が廻ってくる。「銀」の香りがする。さらに左に縦線を加る。5炉目が廻ってくる。3炉目と同じ「花」の香りがする。さらに左に縦線を加え、3炉目の線と、横線でつなぐ。「少女(おとめ)」と言う名の図ができた。香元が答を発表する。正解だった。かぐや姫2号もこちらにVサインをしている。不思議なことに、今日の花の香木も無尽蔵で、正解の人に一片ずつ配られた。薫香録を香包みに折って納める。一生身につきますと言われた。窓の外を見ると、さっきの詩が星座になって見つめ返してくる。乗客は淡雪のように消えていく。ホームページの入り口に戻っていた。香包みは心に吸い込まれたのか消えている」。


008

2017年6月 9日 (金)

薫香源氏絵巻(第5回)290609

夜。晴れ。満月。

1. 天の原財団からメールが入っていた。ネットの上でのお香の会の招待状だ。アドレスを押して入る。天の川の曲水の宴だ。「花の香席」とある。かぐや姫1号はあちらの岸辺に居る。私はこちらの岸の席に座る。

2. 香元が「香始めます」と宣言。

3. 今日の観賞香は「の香」です。「紫の上」としました。光源氏の最愛の妻。満開の桜の花を思わせる絶世の美女です。沈香の中でもひときわ華やかな甘味の中に、光が感じられます。自信を湧かせる香りです。

4. 今日は香道の究極とされる源氏香をします。既に学んだ四香「乳」と「甘」と「樹」と「銀」とこの「花」を5包みずつ用意します。混ぜ合わせます。そこから5包みを抜き出します。

5. 源氏香の図は52種あります。源氏物語は54帖です。数を合わせるため、最初の「桐壺」と最後の「夢の浮橋」がカットされています。さらに言えば、42番目にあるべき「雲がくれ」、光源氏の死の部分ですが、題だけで本文がありません。54帖には入っていません。それぞれの図にはそれぞれの帖の題がつけられています。

6. 「第一香は、「甘」でした。薫香録に縦線を引きます。第二香は「甘」でした。さらに左に縦線を引き、2本を横線でつなぎます。第三香は「花」でした。さらに左に縦線を引きます。第四香は「乳」でした。さらに左に縦線を引きます。第五香は「甘」でした。さらに左に縦線を引き、第一香、第二香をつなぐ横線を伸ばしてつなぎます。横笛という図ができました」。

7. かぐや姫1号は正解しました。この世から着て来た心の十二単(ひとえ)を、また一枚脱いで、天の川に流しました。

8. 列車は次の駅に向かいます。駅はあと5つです。次の駅は「橘の香」です。


008

2017年6月 8日 (木)

香心門 プレマみなみ風 沈香浴 290608

曇りのち晴れ。天気予報はずれ。

入所者10名。介護士さん1名。

寝たきりの方たちのお香の会をした。

初めてなので、楽しんでいただけたか、自信が無い。

これから毎月1回継続する中で、磨いていきたい。

通常のお香の会も、3年前には、手探りだった。

出来不出来はともかく、こんなことに挑戦しているのは、世界で自分だけだと思うと、うれしい気分だ。


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薫香みすず詩帖290608

昨日、梅雨入り。雨50%。

今日の午後は、プレマみなみ風で、寝たきりの方々のための、沈香浴をする。準備をしようと早起きをした。昨夜のうちに天の原財団からメールが入っていた。

ネットの上でのお香の会の招待状だ。

アドレスを押して入る。

そこは前回と同じ、銀河2号列車の座敷だ。

「銀の香席」とある。

着席する。

香元を挟んで、このSNSでつながっているたくさんの客が輪になって座っている。体の無い言霊として参加している。かぐや姫2号もその中に居る。

鉛筆と、今日の「薫香録」の用紙が配られる。日付と下の名前をひらがなで書く。

香元が「唱和しましょう」と言う。薫香録に文字が浮かんでくる。

 

金子みすず。草の名。

人の知っている草の名は、

わたしはちっとも知らないの。

人の知らない草の名を、

わたしはいくつも知ってるの。

それはわたしがつけたのよ、

すきな草にはすきな名を。

人の知っている草の名も、

どうせだれかがつけたのよ。

ほんとの名まえを知ってるは、

空のお日さまばかりなの。

だからわたしはよんでるの、

わたしばかりでよんでるの。

 

最初は観賞香です。今日の香木「銀」がどんな香りかを記憶するために、言葉にして下さい。

「香炉が廻ってくる。沈香の甘い香りの中に煌めく苦みが隠れている。感覚や感情の心の興奮が鎮まる感じがする。薫香録にその旨を記入する」。

 

これまで習った3種の香木「乳」「甘」「樹」と今日の「銀」を合わせて4種の香木を用いて、系図香(けいずこう)をします。

4種の香木をそれぞれ4包みずつ作り、かき混ぜて、4包み選び、順に香炉に載せて、廻します。その関係を表す図は15種あります。

 

「1炉目が廻ってくる。今日覚えたばかりの「銀」の香りがする。薫香録に縦線を記入する。2炉目が廻ってくる。「樹」の香りがする。薫香録の最初の線の左に縦線を加える。3炉目が廻ってくる。「乳」の香りだ。2炉目の線の左に縦線を加える。4炉目が廻ってくる。2炉目と同じ「樹」の香りがする。さらに左に縦線を加え、2炉目の線と横線でつなぐ。「八橋」と言う名の図ができた。香元が答を発表する。正解だった。かぐや姫2号もこちらにVサインをしている。不思議なことに、今日の銀の香木も無尽蔵で、正解の人に一片ずつ配られた。薫香録を香包みに折って納める。一生身につきますと言われた。窓の外を見ると、さっきの詩が星座になって見つめ返してくる。乗客は淡雪のように消えていく。ホームページの入り口に戻っていた。香包みは心に吸い込まれたのか消えている」。


008

2017年6月 7日 (水)

薫香源氏絵巻(第4回)290607

1. 観賞香。「の香」です。言葉の心を象徴するという意味で「朝顔」としました。風流な面では、ピカ一の女性。沈香の甘味の中の煌めく苦味が特徴です。言葉の心に切り替えさせる香りです。

2. 組香。系図香をしました。既に学んだ三香「乳」と「甘」と「樹」とこの「銀」を4包みずつ用意します。混ぜ合わせます。そこから4包みを抜き出します。第一香は、「樹」でした。第二香は「甘」でした。第三香は「樹」でした。第四香は「銀」でした。

3. かぐや姫1号は正解しましたので、列車は次の駅に向かいます。

4. 説明が遅れましたが、かぐや姫1号はこの世から、心の十二単(ひとえ)を着てきました。組香に正解するたびに、一枚ずつ脱いで、天の川に流していきます。最後に二枚残るのでご安心ください。結局どうなるのかは、ちゃんと決まっています。

5. 駅はあと6つです。次の駅は「花の香」です。

008

2017年6月 2日 (金)

薫香みすず詩帖(3)

快晴。30℃。

金井原苑から帰宅、夕食後、パソコンにメールが入っていた。

差出人は、天の原財団だった。

お香の会の招待状だ。

アドレスを押して入る。

そこは前回と同じ、銀河2号列車の座敷だ。

「樹の香席」と掲げている。

着席する。

香元を挟んで、今、このSNSでつながっている数万人もの客が輪になって座っている。体の無い言霊として参加している。かぐや姫2号もその中に居る。

鉛筆と、今日の「薫香録」の用紙が配られる。日付と下の名前をひらがなで書く。香元が香題を唱える。薫香録に文字が浮かんでくる。

 

今日はこれまで習った2つの香木と合わせて、3種香(さんしゅこう)という組香をします。

復習です。

1回目は「乳」の香木でした。体を癒す力があります。苦みがする甘さです。

金子みすず。木。

お花がちって、

実がうれて、

その実が落ちて

葉が落ちて、

それから芽が出て

花がさく。

そうして何べん

まわったら、

この木はご用が

すむかしら。

 

2回目は「甘」の香木でした。感覚の心を癒す力があります。透明な甘さです。

金子みすず。星とたんぽぽ。

青いお空のそこふかく、

海の小石のそのように、

夜がくるまでしずんでる、

昼のお星はめにみえぬ。

見えぬけれどもあるんだよ、

見えぬものでもあるんだよ。

 

今日は、「樹」の香木です。感情の心を癒す力があります。渋みがする甘さです。

一緒に唱和しましょう。

金子みすず。大漁(たいりょう)

朝やけ小やけだ
大漁だ
大ばいわしの
大漁だ。

浜はまつりの
ようだけど
海のなかでは
何万の
いわしのとむらい
するだろう。

 

最初は観賞香です。今日の香木、「樹」がどんな香りかを記憶するために、言葉にして下さい。

「香炉が廻ってくる。沈香の甘い香りの中に仄かな渋みが隠れている。感情の心にわだかまっていた悩みが軽くなる感じがする。薫香録にその旨を記入する」。

これまでの香木と合わせて3種の香木を用いて、香炉を三炉廻す組香をします。三種の香木をそれぞれ3袋ずつ作り、かき混ぜて、3袋選び、順に香炉に載せて、廻します。その関係を表す図は5種あります。

「1炉目が廻ってくる。今日覚えたばかりの「樹」の香りがする。薫香録に縦線を記入する。2炉目が廻ってくる。やはり樹の香りがする。薫香録の最初の線の左に縦線を加え、横線でつなぐ。3炉目が廻ってくる。透明な甘い香りだ。これは初日の甘の香木だ。さらに左に縦線を加える。香元が答を発表する。正解だった。かぐや姫2号もこちらにVサインをしている。不思議なことに、今日の樹の香木は無尽蔵で、正解の人に一片ずつ配られた。薫香録を香包みに折って納める。一生身につきますと言われた。窓の外を見ると、さっきの詩が星座になって見つめ返してくる。乗客は淡雪のように消えていく。ホームページの入り口に戻っていた。香包みは心に吸い込まれたのか消えている」。


008

香心門 金井原苑 290602

快晴。30℃。

入所者8名。介護士さん1名。

かささぎの 渡せる橋に おく霜の

白きを見れば 夜ぞふけにける 中納言家持

早く着いたので、玄関の前庭の木陰の椅子で、山頂の涼風を楽しんだ。たくさんのバラが植えられていて、名札が付いている。季節だろうか、ほとんどの樹が花を付けている。

香席の終わりに「香満ちました」という。御家流の先生に教わった。満ちたのは香りでなく香(こう)、部屋の中でなく各人の心の中、と言う意味だ。

香りは跡形も無く消える。部屋の中にも残らない。香(こう)は香りが残した記憶のことだ。記憶なら心の中にいつまでも残る。

中学の頃「バラが咲いた」というフォークソングが流行った。

「僕の庭に・・・いつまでも咲いてておくれ」という歌詞が、中学生には、幼稚に思えた。

バラも庭も具体的な花や場所でなく、抽象的な記憶の事なのだと、50年経って納得した気分だった。


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2017年6月 1日 (木)

香心門 グレープの里デイサービス 290601

雨後晴れ。

来所者5名。介護士さん1名。

今日から月が変わる。

七夕ということで、冬の和歌が登場。

かささぎの 渡せる橋に おく霜の

白きを見れば 夜ぞふけにける 中納言家持

宮中の七夕行事「乞巧奠(きっこうでん)」の紙芝居をした。

短冊に願いを書いて献香。

節句の絵や伝説を交えると、香の味も深まる。

最近マンネリなので、一工夫したいと思った。


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