香炉屋日記290514銀河鉄道の夜
今夜、パソコンをチェックすると、メールが入っていた。
差出人は、天の原振興財団、かぐや姫1号とあった。
次回はこちらへと、アドレスが書いてある。
そのアドレスを押すと、「天の原探香團」というに部屋に入った。
入り口で、動画の少女が迎え、メニューを見せる。
一番上の「大災害」を頼む。
画面が現れる。
揺れる携帯の画面だ。
沖から海水が押し寄せて、せりあがって、眼下の家や工場や車を呑みこんでいく様子が映る。
雪が降っている。
悲鳴や呼び声が聞こえる。
テロップが流れる。
「災害とは何だろう。隕石の衝突、火山の噴火、地震や洪水などがある。さらに動植物や微生物からの攻撃もある。一番多いのは、人間同士の攻撃だ」。
「社会組織や建物への被害は歴史に刻まれるが、残された人々の心の被害は記されず忘れられる」。
「初めは絶望、心の活動停止だ。感覚や感情の心が回復してやっと悲しみや苦しみが生じる。動物としての心の活動開始だ。言葉で目的を作り、勇気を奮って挑戦する。必要なら我慢や努力もする。そのことが喜びになる。ヒトとしての心の活動開始だ。そんな風に心は回復していくのだろう」。
「この過程が、心の瓦礫撤去作業だ。この物語は、残された者たちの心の瓦礫の撤去の記録だ」。
場面が変わり、少女の家族の葬儀や家の瓦礫の片付けが映る。
さらに場面は変わり、6年経っている。少女はもう中学生だ。スマホで、「天の原振興財団」のサイトを見ている。
「銀河鉄道」というボタンを押す。画面の障子が開いて、縁側の向こうに夕焼け。大きな山がそびえている。脇に香炉があって香りが立ち上っている。
「かぐや姫になりたい」というボタンを押す。
かぐや姫2号の誕生ですという音声が流れる。
あれ、1号じゃないのか。
明日は早い。もう寝なければ。画面を閉じた。
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