香炉屋日記290508銀河鉄道の夜
晴れ。暑いほど。
6年前、ここが開店した頃の話を思い出した。
若い女性が入ってきた。
「香かふぇ」という看板に惹かれ、喫茶店のつもりのようだ。
奥の席に座った。
ここは、飲み物ではなく聞き物つまり香りの店だと説明した。
メニューを見て、良く分からないので、何か一服、という。
香炉の準備をして、テーブルに置いて、花の沈香を載せる。
香の聞き方は知っているようだ。
しばらく楽しんで、香炉を置いて、本を開いて読み始めた。近所の古書店のブックカバーが懸っている。
小一時間ほどいて、街の雑踏に消えていった。棚の片付けなどをしてから、テーブルに行くと、本が在った。表紙を開くと、「銀河鉄道の夜」だった。パソコンで作った本だ。持ち主の手掛かりを探して、表紙を開いた。あの東日本大震災が舞台だ。あの頃自分がSNSへ投稿したままの内容だった。それを誰かが製本したのだ。何とも嬉しい。
ブックカバーの古書店の店主とは顔なじみだ。電話をして、少し前に手作りの「銀河鉄道の夜」を買った女性の客は居ないか聞いた。そんな本は見たことがないという。
製本した人、読んでいた人は誰だったのだろう。私だと知っていてこの店に来て、置いていったのだろうか。続きを書けということなのか。
あれから6年経った。忘れかけていた感情がよみがえってきた。
あの時の気持ちを忘れないうちに、もう一度続きを書いてみようと思う。
復興とは何をどうすることなのだろう。あの時は、町や村を元にもどすことだと思っていた。しかし今は、町や村のことではなく、一人一人の心の復興のことだったのだと思っている。
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