香炉屋日記290504焼きそばパン
今日も暑からず寒からず、良い連休の一日になりそうだ。
参道に露店が並んでいる。
きっと食べ物の屋台もたくさん出ているだろうと思うと、急に空腹になった。昼食にしよう。その旨の札をドアに掛けて、戸締りをした。
このビルの裏に、喫茶を兼ねたパン屋がある。白い前掛けのおじいさんとおばあさんが忙しそうにパンを焼いたり、接客をしたりしている。私は焼きそばパン専門だ。焦げた香辛料が食欲以上のものを誘う。
中学生になると給食が無くなり、弁当か、購買部でおばさんから菓子パンと牛乳を買って食べた。昼休み、好きなパンが売り切れる前にと、廊下を走って叱られた。私は、焼きそばパンとコーヒー牛乳が好きだった。
昔、美味しいと思った食べ物が、歳をとった今、食べても、それほどでないことはよくある。しかし、このパンは昔のままだ。
焼きそばには何も入っておらず、ソースだけで、油感もない。少量の紅ショウガがまぶしてある。パンの切り込みに、焼きそばが、はみ出すように押し込んである。プラスチックの袋が窮屈そうだ。
中身がこぼれないように端からかぶりつく。昔と違うのは、パンがほのかに甘く、ソバの量が2倍に増えている。贅沢な時代になった感がある。
もうひとつ思い出の味がある。子供の頃に時代劇で大好きな番組が在った。「素浪人月影兵庫」主演は、近衛十四郎。旅の主人公が、苦境に陥る善人を助け、悪人を懲らしめる話だ。一件落着の後、お礼にと、茶店などで安い酒とつまみを振舞われると、それまで謹厳実直だった相好が崩れて、意地汚い酒飲みに豹変するのが面白かった。特にオカラが好物で、箸でつまんで掌に移して、酒と一緒に口に放り込むのが堪らなかった。それ以来、私にとって、オカラは空想上の珍味になった。
焼きそばパンもオカラも、味覚や嗅覚という感覚だけを味わっているのでなく、記憶や願望という言葉も味わっている。
心が成熟するに従って言葉の味が濃く感じられるようになっていくのだと思う。
香りについても、若い人は、甘い香りや辛い香り、レモンのような爽やかな酸味を好む。
熟年になると、発酵食品のような複雑な酸味、塩味、苦みや渋みも好きになる。
香りの侘び寂びだ。
孫が夕食に来る。早仕舞して、投稿して、帰ろう。
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